デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド2020年8月運用概況
デジタル・トランスフォーメーション株式ファンドの基準価額は、前月末の設定来で大きく上昇し、グローバル株式市場のリターンを上回りました。
個別銘柄では、食品デリバリー事業の取引額および日次受注件数が増加したことや、消費者が質の高いレストランを選別していることから第3四半期には受注額が新型コロナウイルス感染拡大前の水準を超えるとみられる中国eコマース大手(小売)や、フィンテック部門の成長加速により第2四 半期の売上高が大幅に増加したことに加えて、モバイル・ウォレット・サービスのユーザー数増加や主力ゲームの世界的な人気によってデジタル・エ ンターテインメント部門の四半期アクティブユーザー数が大きく伸びたことなどが好感されたシンガポールのオンライン・プラットフォーム(メディ ア・娯楽)が、プラス寄与上位に並びました。
また、動画共有アプリにおいて競合する中国のインターネット企業の動画投稿アプリと類似した新機能 の提供開始に成功し、ユーザーからの新機能の評価も上々な米SNS世界大手(メディア・娯楽)や、米同業他社の好調な第2四半期決算を受けてク ラウドや生産性向上の関連銘柄に対するセンチメントが押し上げられたことで株価が上昇した米ビジネス向けコミュニケーション・ツール(ソフトウェア・サービス)なども、プラスに寄与しました。
一方で、新製品がデータ分析業界における優位性を高めたにもかかわらず、2020年の業績見通しが市場予想を下回ったことが嫌気された米データ分析プラットフォーム(ソフトウェア・サービス)や、増資発表が株価下落につながった米教育SaaS型クラウドサ―ビス(ソフトウェア・サービス)が、マイナス寄与上位に並びました。
また、慢性病管理の向上に注力するサブスク型健康管理IT企業の買収報道を受けて株価が軟調となった米 遠隔医療サービス大手(ヘルスケア機器サービス)もマイナスに寄与しましたが、当ファンドでは、業界をリードする法人向けおよびダイレクト・トゥ・コンシューマー(オンラインで顧客に直接サービス等を提供する形式)の同社の遠隔医療プラットフォームと、買収先の分散型生体認証機器や 機械学習インフラには、非常に大きなシナジー効果があるとみています。さらに、米国証券取引委員会(SEC)による調査開始が嫌気された中国動 画配信サービス(メディア・娯楽)もマイナスに寄与しました。同社は、米投資会社が調査レポートで告発した買収・投資案件に関連する文書や財務・経営記録をSECから求められており、当ファンドでは報道を受けて同社株式を全売却しました。その他、取引先である中国の通信機器大手への 米国による制裁強化や、競争激化により日本の競合企業が自律型ロボットの値下げを行ったことなどから産業オートメーション事業への悪影響が警戒 された、米エレクトロニクス産業向け自動試験装置(半導体・半導体製造装置)もマイナスに影響しました。
◎今後の見通し
世界経済はオフラインからオンラインへ、対面からデジタルへと移行しつつあります。娯楽と労働の両面において成長を牽引するのは、「ゼロ・コンタクト(非接触型)」やフリクションレスであるとみています。この長期的なトレンドはモバイル・インターネットから始まり、新型コロナウイルスが世界で流行する間に加速し、消費者や企業の行動様式を恒久的に変化させたと考えています。
世界の大手企業2,000社にとって、最も緊急性の高い取り組みはDX(デジタル・トランスフォーメーション)、つまりクラウドやモバイル・コンピューティングをベースにデジタルによる業務フローを活用してビジネスを再構築することです。テクノロジーは、肉体労働を自動化することで農業や製造業をすでに大きく変化させており、長期的な生産性の向上をもたらしています。
当ファンドでは、今後数十年の間にクラウド・コンピューティングや人工知能(AI)のようなテクノロジーによって、データ収集、分析、営業およびマーケティング、顧客サービスなどその他の頭脳労働が自動化されると見ています。「SaaS」を用いたビジネスモデルの追い風を活かして、デジタル・トランスフォーメーション関連のソフトウェア市場は今後10年で飛躍的に成長するとみられます。
また、ストリーミングによって、消費者はビデオ、オーディオ、ゲームの膨大なコンテンツ・ライブラリーにアクセスできます。ストリーミングは コンテンツ配信における主要なテクノロジーになり、視聴習慣の新しい形態になると考えています。ユーザーはオンデマンドのエンターテインメントをあらゆる形態で視聴することを期待しています。世界のストリーミングの売上は今後5年間で4倍超に拡大する可能性があると予想しています。
デジタル・トランスフォーメーション株式ファンドはどんなファンドか?
新型コロナウイルスは、人との不必要な接触を避けたいという「非接触ニーズ」を高め、 あらゆる分野でデジタル化を急拡大させた。
オンライン会議などのデジタル化の動きは以前から存在していたものの、 旧来の制度、慣習などの障害に阻まれ、ゆっくりとした普及拡大にとどまっていた。
今回のコロナショックは、その障害を見直すきっかけになったといえるだろう。
ウイルス感染を恐れ、人々は不必要な接触を避ける。このような動きはコロナ感染収束後もトラウマのように残り、 今後の世の中は、常に非接触ニーズが存在する「新常態」となる可能性がある。
コロナショック後は、非接触ニーズを満たす、デジタル化された技術やサービスが成長領域として立ち上がり、 デジタル化による変革「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」をさらに加速させる。
DX関連企業の事業モデルは広がり、新技術や新サービス、新市場の拡大を促すことになるだろう。
新常態の世界で求められる非接触(ゼロ・コンタクト)
lこの先、世界の経済が活動を回復し、再び成長へ戻ったとしても、新型コロナ前の世界には戻れないと考えられる。
リモートワーク
時間や場所の制約から離れ、柔軟に働く時代が本格化している。
労働効率向上や人手不足の改善が求められるなか、従来の雇用形態 では対応できない労働力を取り込めることに注目している。
オンラインサービス
オンラインサービスは、人々の生活において不可欠なものとなってい る。そうした中、ゲームが新たなオンライン上のコミュニティとして進化 を遂げつつあることに注目している。
ストリーミングメディア
いつでもどこでもオンライン上で音楽や映像を楽しめるようになると共 に、利用者の嗜好に合ったメニュー(おすすめ)が提供されるなど、進 化したサービスがさらに普及すると予想している。
非接触型決済
モバイルペイメント(キャッシュレス決済)は、現金決済にはない、新た な付加価値を生む仕組みであり、その市場は広く、この先“爆発的”と も言える普及を遂げると考えている。
遠隔提供サービス
伝統的に対面で行なわれていたサービスが、オンライン化されること により、新たな付加価値を持つようになった。今後も、様々なサービス に広がっていくことに注目している。
デジタル・トランスフォーメーション株式ファンドの投資内容 5月時点
順位 | 銘柄名称 | 国・地域 | (業種)企業概要 | 組入比率 |
1 | Sea(シー) | シンガ ポール | (メディア・エンターテインメント) ゲーム、eコマースなどのアジア最大級の革新企業。
同社のゲームプラットフォームは、4億人以上(2020年3月現在)のユーザーを抱えています。 |
6.0 |
2 | Spotify Technology (スポティファイ) | スウェー デン | (メディア・エンターテインメント) 世界で人気のあるオーディオ・ストリーミングサービス企業 の一つで、月間約2億8,600万人(2020年3月現在)のアクティブユーザーを抱えています。 | 5.0 |
2 | Meituan Dianping (美団点評) | 中国 | (小売) 中国最大級の生活関連サイト運営企業の一角。外食店や旅行代理店などの事業 者と消費者を結ぶ電子商取引プラットフォームを運営しています。 | 5.0 |
2 | Roku(ロク) | 米国 | (メディア・エンターテインメント) ビデオストリーミング市場での主要プレイヤーの一角。独 自のTV用オペレーティングシステムや、ビデオストリーミング機器を提供しています。 | 5.0 |
5 | Netflix(ネットフリックス) | 米国 | (メディア・エンターテインメント) 人気の定額制ビデオ・オンデマンドストリーミングサービス 企業。世界中に1億6,700万人(2019年12月現在)を超える有料ユーザーを抱えています。 | 4.0 |
5 | Tencent Holdings (腾讯(テンセント)) | 中国 | (メディア・エンターテインメント) 世界的に人気があり、収益性の高いメッセージング・サー ビスおよびオンライン・ゲームを運営しています。 | 4.0 |
5 | Facebook(フェイスブック) | 米国 | (メディア・エンターテインメント) 世界最大級のソーシャルメディア・サービス提供企業。
InstagramやWhatsAppを含む一連のアプリに加えゲームや電子商取引を手掛けています。 |
4.0 |
8 | Twilio(トゥイリオ) | 米国 | (ソフトウェア・サービス) 簡易にテキスト、電話、ビデオ通信を可能にするソフトウェアの提 供企業。通信販売事業者が顧客へ情報提供を行なうシステムなどに利用されています。 | 3.0 |
9 | 2U(トゥーユー) | 米国 | (ソフトウェア・サービス) オンライン学位と教育訓練プログラム用のプラットフォームを提供。 学生は、質の高い教育を受け学位の習得を目指すことが可能となります。 | 2.0 |
9 | Slack(スラック) | 米国 | (ソフトウェア・サービス) メッセージングなどの双方向のコミュニケーション・サービスの提 供企業。リモートワークなどにおけるチームコミュニケーションに活用されています。 | 2.0 |
Twilio(トゥイリオ)
顧客のコミュニケーションシステム構築を 低廉な価格で実現
lインターネットを用いたクラウド上での電話の受発信、録音や転送、SMS送受信などのサービスを提供しています。
l同社のサービスはクラウド上で行なわれ、新たな電話回線の敷設や専用機器の購入なしに、 電話の送受信システムを構築できます。また、従量課金をベースとしており、利用企業にとっ ては、初期費用を抑えられることに加え、各国での契約手続きが不要となるなどメリット が明確です。加えて、代表電話に入った通話の振り分けといった高度な機能も提供される ため、様々なコールセンター業務での活用が見られます。
lSMSを使った本人認証サービスなども含めて、包括的にサービスを提供しており、自動車配 車サービスのUber(ウーバー)やLyft(リフト)、民泊サービスのairbnb(エアビーアンドビー)、 オンラインショッピングのShopify(ショッピファイ)など様々な企業で導入されています。
Facebook(フェイスブック)
eコマースへ参入した世界最大級のSNSカンパニー
l世界人口の約3分の1という世界最大級のユーザー数を背景に、「Facebookショップ」などを展開し、eコマース業界へ参入。大きな成 長ポテンシャルを秘めています。
lよくある通販サイトのような「品揃えや安さ」重視ではなく、「個性やこだわり」などを重視したブティック・セレクトショップのような運営で、差別化を図っています。
lインフルエンサーによる「ストリーミングコマース」、共同で購入する
「ソーシャルコマース」など独自の取り組みを行なっています。
Tencent(テンセント)
ヒットタイトルを 数多く持つ王者
ARKの見方
l中国最大級のゲームプラットフォーマーとして、数億人のアクティブ ユーザーを抱え、売上上位のゲームタイトルを数多く有しています。
l同社グループが手掛ける世界中で人気のオンラインゲーム「FORTNITE(フォートナイト)」は、2020年4月に、利用登録者が 3.5億人を突破し、単月の総プレイ時間が32億時間を超える規模と なりました。
l2019年7月には同ゲームの世界大会が開催され、大会の優勝賞金は300万米ドル(約3億2,300万円)、賞金総額は3,000万米ドル(約32億円)と破格であり、同ゲームへの注目度・人気の高さがうか がえます。
Netflix
(ネットフリックス)
世界最大級のオンラインストリーミングサービス企業
l映画やドラマをインターネットを介し、スマートフォン、 タブレット、PCなどに提供。オリジナルコンテンツを 積極的に投入し、ユーザー数を増やしています。
lストリーミング収入の多くを「番組(コンテンツ)制作費」などに費やしており、一般的なテレビ番 組や映画などを大きく上回る資金で番組制作を行なっています。このことが、年平均で2,300 万人規模の新規有料会員を安定的に獲得することにつながっていると考えられます。保有する コンテンツは、オリジナル比率が高く、同社の会員だけが視聴できるという点も、差別化ポイン トとなっています。
l視聴者の行動(早送り、繰り返し、停止など)データを収集し、AIを活用したシーンの分析や各 種マーケティングから、視聴者に受け入れられるコンテンツを探っています。
lまた、制作費の投入額と顧客維持効果という費用対効果を踏まえ、ドラマなどシリーズものは2 シーズン程度に抑えて制作を行なっています。
PayPal(ペイパル)
デジタル決済サービスの先駆者
l決済サービスの先駆者で、インターネットを活用したデジタル決済 サービスに早くから着目し、個人のカード情報を相手先に知らせ ることなく決済を可能にするデジタルプラットフォームを提供。
l2013年に買収した、スマートフォンでの個人間送金サービス「Venmo(ベンモ)」は、若者世代に おける利用率が高く、今後、益々浸透することが期待されます。
lオンライン決済代行サービス「Braintree(ブレインツリー)」は、消費者がネットショッピングなど を利用する際に、クレジットカード情報を各サービスごとに入力する手間と不安を解消する 決済代行サービスです。eコマースやストリーミングメディアの利用といった、ゼロ・コンタクト・ ビジネスの拡大を支えると共に、その拡大により恩恵を受けると考えています。
l最近では、仮想通貨での決済サービスを提供するため、仮想通貨取引所を運営する企業と提 携するなど事業の拡大を続けています。
2U(トゥーユー)
世界中の人々に学びの機会を提供する オンライン学習プラットフォーマー
lオンライン学習プラットフォームを提供。 学生は、仕事など をこなしながら質の高い教育を受け、学位の習得を目指す ことが可能となります。
lハーバード大学やケンブリッジ大学などを含む世界70以上の様々な大学と提携し、オンライン学習のプラットフォームを提供してい ます。受講する場所を選ばない特徴を活かし、社会人の継続学習の場としても活用されています。その他、看護やフィンテック、AIと いった専門分野の短期プログラムも提供しています。
lコロナショックにより、学校では授業のオンライン移行が進みました。また、在宅勤務の普及に伴なう在宅 時間の増加によって継続学習ニーズも増加しており、オンラインでありながら、ディスカッションも可能であ る同社のシステムは今後も高い需要が見込まれます。
lまた同社は、失業者向けの就業支援コースなども手掛けており、米国で労働者不足の補完のために、企業 向けの短期講座と新人研修プログラムの提供を計画していることなどにも注目しています。
ARKのリサーチシステム
ARKは、破壊的イノベーションを発掘するには、従来の伝統的なリサーチ手法だけでは不十分と考えます。伝統的なリサーチ手法で 得た情報をもとに、外部の専門家とディスカッション、共同研究、クラウドソーシングなどを行ない、さらにネット上での批評を取り入れて 分析の精度を高めていく「 ARK Open Research Ecosystem 」により、知見を深めています。
デジタル・トランスフォーメーション株式ファンドの専門家の評価は?
コロナショックが起こった3月からおおよそ半年後に、コロナど真ん中のファンドが登場しました。
非接触関連銘柄というのは、1年から2年続くと考えられるコロナ環境下では非常にニーズが伸びる分野と思われ、高い投資期間があると思われます。玉石混合が多いテクノロジー銘柄においては分散投資は必要な手法であり、ニーズの高いファンドと思われます。
昔流行った水関連や太陽光関連に比べて、実現性の高いテーマであり、一時的なブームでは終わらないと思われます。
また上位銘柄が個性的なのも良いですね。運用を任せている価値があります。上位がアップル、マイクロソフト、アマゾンでは自分で買えばいいとなりますので、そういった意味では面白いファンドといえます。
テーマ性★★★★★
収益性★★★★☆
投資タイミング★★★★☆