世界の株式市場は、2019年に米中貿易摩擦や成長鈍化の脅威で強気相場が乱高下すると予想していたマネーマネジャーらに反し、過去十年間で最も好調だった年の一つを終えた。

ほんの12ヵ月前までは、市場のムードはずっと悪かった。世界経済は弱まり、株式、債券、商品はともに下落し、マネーマネジャーらは、米連邦準備制度理事会 (FRB) の利上げが景気減速を長期的な下降に変えると懸念した。一方、ダウ工業株30種平均は22%上昇し、2017年以来最高のパフォーマンスとなった。
テクノロジー部門が進歩の大半をリードしてきた。その半数近くはAppleとMicrosoftによるもので、今年はそれぞれ85%と55%増加している。この2社の地位を考えると、特に注目に値する。2社とも時価総額が1兆ドルを超える米国の二大上場企業である。メモリーチップメーカーから決済処理会社まで、他のハイテク株も上昇に加わった。アドバンスト・マイクロ・デバイシズとラム・リサーチは2019年に倍以上に増え、マスターカードは58%、ビザは42%それぞれ上昇した。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのシニア・インデックス・アナリスト、ハワード・シルバーブラット氏によると、今年のS&P500種指数は約90%が上昇し、上げ幅が非常に大きかった。
この春、最も注目された経済指標の1つであるイールドカーブがリセッション (景気後退) の可能性を示唆する警告を発したときには、市場は利下げを織り込まず、景気後退を予想していた。10年物国債の利回りは三月末に3か月物国債の利回りを下回った。このような逆転現象は、1975年以降の景気後退に先行して起きており、銀行にとって特に不吉な兆候である。なぜなら、この逆転現象は、主要な利益バロメーター、純利ざや、つまり、貸し手が預金に対して支払う金額と貸出金の金額とのギャップに影響を与えるからである。
しかし、FRBが利下げに踏み切ったことで、インバーテッド・イールド・カーブは投資家の興味を引くものとなった。10年債の利回りは、3カ月債の利回りを上回った。中銀支援策の恩恵を最も受けたのは銀行株だった。ナスダックKBW銀行指数は今年32%上昇したのに対し、シティグループは53%上昇し、JPモルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカが40%以上上昇した。
ここ数カ月、貿易摩擦の緩和も市場にとって追い風となっている。2019年の大半の期間、投資家は米中貿易交渉の前進や後退を繰り返した。最近、米中両国の代表らが 「初期合意が近い」 と明らかにし、市場の不安感は和らいだ。しかし、関税は世界の製造業データを圧迫し、経済成長を抑えている。米国をはじめとする世界の製造業は、景気後退の中では、良くても平坦で最悪な状況である。ただし世界経済と製造業部門に対する最悪の懸念は後退したとみられる。同副長官は、米国経済は、国内総生産 (GDP) 成長率が、過去10年間の大半の成長率とほぼ同水準の約2%に達しており、収益成長率は、1ケタ台後半になる、との見通しを示した。
2019年の上昇は米国株に限られたものではない。「Stoxx Europe600」 は今年23%上昇し、この十年間で最高のパフォーマンスを達成する見込みだ。中国上海総合指数は22%、日本の日経225指数は18%上昇した。金や債券のような伝統的に安全な資産も急増している。金先物は今年18%上昇し、過去十年間で最高のパフォーマンスを記録した。一方、債券相場の上昇により、10年物米国債の利回りは四分の三ポイント以上低下した。S&P地方債指数は今年7.3%上昇している。
しかし、この力強い上昇は、少なくとも米国株を見る限り、ファンダメンタルズを上回っているようだ。株価の急騰と比較すると、S&P500の企業は今年、収益と収益の両方で低い成長を記録した。ファクトセットのデータによると、2018年には22%だった一株当たり利益の伸びは1.4%にとどまり、来年には9.55%の増益が見込まれている。しかし、景気減速は投資家を悩ませてはいない。低失業率、低金利、力強い賃金上昇を背景に、市場はこの軌道を維持するとみられている。