ポンジスキームで日本で最大級の被害といえば安愚楽牧場を除いてありません。安愚楽牧場は牛のオーナーになりませんかというオーナー商法で、実物資産があるということで、口コミで広がっていきました。牛オーナー商法は、各種優待のような形での、お歳暮のようなものが届いていたこともあり、安心感からか、様々な地域で広がっていたようです。
その規模は衝撃的です。
黒毛和牛委託オーナー被害者数=7万3,356人
黒毛和牛委託オーナー被害総額=4,207億6,700万円
まさに日本最大級のポンジスキーム事件といってよいでしょう。
有名どころでは
安愚楽牧場 4200億円
豊田商事 2000億円
八葉 1500億円
MRI 1300億円
L&G(円天)1260億円
といったところでしょう。
ポンジ・スキームとは、「出資をしてもらえば、それを運用して出た利益を配当金として支払う」といって資金を集め、実際は運用などしないで、新しい出資者からの出資金を配当金として支払いながら、破たんすることを前提に、お金をだまし取るという手法で、アメリカで天才詐欺師といわれた、チャールズ・ポンジがその名の由来といわれています。
訴状などによると、安愚楽牧場のビジネスモデルは、出資者が牧場所有のメスの繁殖牛を購入してオーナーとなり、年1回産む子牛を買い取る名目で毎年3~8%を配当。契約終了時には繁殖牛を購入時と同額で買い戻すという仕組みだった。
しかし、経営破綻して以降、ベールに包まれてきた実態が次々に明らかになる。消費者庁の調べでは、19年3月時点で繁殖牛の契約頭数は9万2023頭だったが、実際にいた牛は5万1428頭。破綻直前の23年3月時点では契約が9万7986頭に対し、実際にいたのは6万5572頭だった。
さらに、オス牛やメスでも繁殖能力のない子牛を繁殖牛と偽って販売。トレーサビリティー法に基づく「個体識別番号」とは別に、独自の耳番号表示をして架空の繁殖牛を販売していた。
既存の出資者に対する配当などは、新たな出資者への販売代金を充てていた。まさに「自転車操業」の状態で、破綻するのは必至の状況だった。
あぐら牧場の難しいところは、途中で経営状態が悪化したことで結果的にポンジスキームのような自転車操業になったということです。
このように「3%から8%」というような高配当をうたう事業の場合、配当が一度得求まると大量の解約が殺到するため、事業継続性を難しくしてします。そのため、新規資金を配当に回すといったポンジスキームに手を出しやすくなってしまうのです。
投資は、投資家全員が時にマイナスになることを受け入れ、継続的な事業の継続環境を整える必要があります。しかし「高配当」で顧客を集める場合、集客が早い一方、リスク許容度の低い顧客が去っていくのも一瞬です。運用会社としては「高配当」による集客は、手を出してはいけない悪魔の手法といえるでしょう。
安愚楽牧場については、事業に投資して失敗したといったところでしょうか。10年以上継続されており、口蹄疫の流行など一部不幸もありましたが、投資家も運営者も皆が不幸になったのは、「高配当」というあまりにはかない集客手法に手を染めたためでしょう。