米国株・米国債券から世界株・世界債券への検証へ
「最も重要なことは、ポートフォリオを多様化することだと思う。」—ポール・チューダー・ジョーンズ
(伝説的先物トレーダー。1989年10月に起きたブラックマンデー、世界の株式市場は1929年の大恐慌に匹敵する暴落に見舞われ、多くの投資家にとって絶望的な月となった。その同じ月、ポール・チューダー・ジョーンズによって運用されているチューダー先物ファンドは六二パーセントという驚異的なリターンを記録した。)
ここで皆さんに一つの質問をしてみようと思う。質問1:世界最大の金融資産クラスはどれですか。
①米国株
②米国債
③世界株(のぞく米国)
④世界債券(のぞく米国)
さて答えはわかったでしょうか?
答えは:④世界債券(徐く米国)となります。
これは通常、米国の株式や債券が答えだと考える投資家にとっては驚くべきことではないでしょうか?
ここでまずは
①米国株
②米国債
③世界株(のぞく米国)
④世界債券(のぞく米国)
という基本的な資産の構成比をみていきましょう。日本人だから日本株以外なのでは?と思うかもしれませんが、
運用の世界では研究でも論文でも、実績でも基本はアメリカを中心に考えたほうが良いと思います。
◆主要資産の市場占有率推移

参照:Global fixed income: Considerations for U.S. investors, Vanguard (2014)
ここで大切なことは昔に比べて株式より債券の市場占有率が増えてきていることです。
特に米国以外の債券の割合が増えていることは知っておくべきだと思います。
◆世界債券の発行割合

参照:Visual Capitalist
またその世界債券の中でも、米国、中国、日本の債券の割合はとても大きいことを知っておいてください。
アメリカの債券は全体の31%を占めていますが、日本は17%、中国が9.8%を占めておりこの3か国が国債発行ではリーディンカントリーといえそうです。
通常インデックス投資では、時価総額に応じて組み入れますが、こと債券においては評価が高いから時価総額が大きいのと異なり、たくさん借金した国の
時価総額が大きくなるため注意が必要です。
さてここでもう一問質問をしてみましょう。
質問2:グローバル株式配分のうち、どの程度を米国に配分すべきだとおもいますか?
答え:多くとも半分くらい。
米国の投資家の場合は通常、株式割り当ての約70%を米国内の自国に置いています。これが日本となると約95%※近いといわれています。これは通常「ホームカントリーバイアス」と呼ばれ、どこの国でも起こっている事象です。世界中のほとんどの投資家は、資産のほとんどを自分の市場に投資している。ホームカントリーバイアス図は、日本、米国、英国、オーストラリア、カナダにおける「自国バイアス」効果を示したバンガードのグラフである。青い棒は、投資家が世界的な加重に従ってそれぞれの国をどれだけ保有すべきかを示し、赤い棒は、彼らが実際に自分の国をどれだけ保有しているか―あまりにも多すぎるのではないでしょうか?
日本はアメリカに比べて金融教育が足りていないといいますが、日本だけでなく全世界での問題といえそうです。
※日本の外貨資産予想は2018年末の家計金融資産残高が前年末比1.3%減の1,830兆円であることと、日経新聞より「野村資本市場研究所の宮本佐知子氏は、18年度末の家計の外貨建て資産は投資信託を含めて43兆6300億円になったと推計する。」とより推計した。
◆ホームカントリーバイアス
※時価総額は2019年11月時点で計算

仮に時価総額にあった形で投資する場合アメリカ人なら米国株を56.7%まで、日本人であれば日本株を7.2%までしか組み入れることができません。1899年当時、米国は世界の時価総額のわずか15%、世界のGDPに占める割合はわずか20%(新興市場は世界のGDPの50%を占めるが、時価総額のわずか13%)であったことも注目に値します。
まあ日本に関してみると下記の家計の金融資産構成からわかるように、ほとんど投資をしていないことがわかります。金融資産んが1835兆円あるうち71兆円が投資信託に、183兆円が株式に行っているだけで、ほとんどの972兆円は、前半の案内で見てきたように期待リターンがマイナスの現金での保有となっています。
◆家計の金融資産構成

ここで各国の株式市場が時代とともに占有率がどのように変化してきたか見てみましょう。
まずは1899年と2019年の株式市場の占有率の比較です。
1899年時点では日本の占有率は見当たりませんが、最近では8.4%となっています。しかしそれでもアメリカの1/6程度の市場占有率です。
またイギリスは1899年時点では25%あっ5.5年には5.5%まで減っています。
◆株式市場規模、1899年および2019年年初の比較

参照:Credit Suisse global markets
このように市場の規模は100年レベルでも大きく変わります。日本株や日本債券だけで投資ポートフォリオを構築する必要はありません。
下記の図は、時間の経過とともに時価総額比率がどのように変化したかを示す別のチャートです。
1980年代の日本の大きなバブルの膨張とその後の急激な収縮に注目してください。
◆:株式市場規模 (1900年~2012年)

参照:Credit Suisse global markets
そこで、投資家が問うべき重要な質問は、「もし60/40のポートフォリオを米国以外の外国株や債券にまで拡大したら、どのような配分になるだろうか。それは収益率の向上やリスクの軽減に役立つのだろうか。」である。
次のポートフォリオは、60/40のポートフォリオである。ここでは、米国のインデックスだけでなく、世界のインデックスを使用している。株式の配分は、国内先進株式と海外先進株式(MSCI EAFE)に半分ずつ、債券の配分は、国内10年物国債と海外年物国債に半分ずつに分けた。この図でグローバル化を行っても、最終的な結果はあまり変わりませんが、リターンが増加し、ボラティリティが低下し、シャープ比率(すべての良いこと)が向上します。図19が示すように、世界全体のポートフォリオは、1973~1981年のインフレ期にも改善した。
◆さまざまな資産と戦略、実質リターン、1973-2013
名目リターン | 短期債 | 債券 | 株式 | 60/40 | 世界60/40 |
リターン | 5.27% | 7.74% | 10.21% | 9.60% | 10.02% |
リスク | 0.97% | 8.43% | 15.57% | 10.20% | 9.90% |
シャープレシオ | 0 | 0.29 | 0.32 | 0.42 | 0.48 |
最大下落率 | 0.00% | -15.79% | -50.95% | -29.28% | 35.20% |
実質リターン | 短期債 | 債券 | 株式 | 60/40 | 世界60/40 |
リターン | 0.99% | 3.34% | 5.71% | 5.13% | 5.54% |
リスク | 1.24% | 8.74% | 15.74% | 10.46% | 10.14% |
シャープレシオ | 0.00 | 0.27 | 0.30 | 0.39 | 0.45 |
最大下落率 | 0.00% | -44.75% | -54.12% | -39.35% | -36.74% |
実質リターン 1973-1981 | 短期債 | 債券 | 株式 | 60/40 | 世界60/40 |
リターン | -0.71% | -5.08% | -3.92% | -4.05% | -2.09% |
実質リターン 1982-2013 | 短期債 | 債券 | 株式 | 60/40 | 世界60/40 |
リターン | 1.48% | 5.85% | 8.61% | 7.88% | 7.80% |
実質リターン 1973-2013 |
短期債 | 債券 | 株式 | 60/40 | 世界60/40 |
1970s | -1.55% | -4.23% | -5.26% | -4.56% | -1.98% |
1980s | 3.81% | 7.22% | 11.67% | 10.28% | 11.37% |
1990s | 1.95% | 4.87% | 14.71% | 10.89% | 8.88% |
2000s | 0.19% | 3.92% | -3.38% | -0.04% | 1.67% |
2010s | -1.82% | 2.17% | 13.73% | 9.44% | 6.36% |
リスク | 2.38% | 4.33% | 9.78% | 7.05% | 5.41% |
資産クラスを増やして分散性を高めることは、分散ポートフォリオの構築に役立つと思います。
次回60/40の投資対象を米国株、米国債券だけから世界株、世界債券に広げて検証していきます。