株や債券の過去の実績はどうだったのか?
投資家にとって残念なことに、ポートフォリオには過去最高値の更新だけでなく、ドローダウンの更新の連続です。ドローダウンとは投資の実績の山から谷への変化のことです。つまり、100で買った投資が75に下落すると、25%のドローダウンになります。その後150まで上昇すると、ドローダウンは0(史上最高値)となります。これは投資が損しているのかどうかではなく、最高値からどれだけ下がったのかを示します。多くの投資家は投資した金額よりも、一度得た最高値を基準に投資を考えることが多いといわれています。
長期的な視点から、1900年から2014年までの16カ国の主な資産クラスについて、最良、中間、最悪のシナリオを示しています。米ドルベースのリターンはほぼ同じです。まず、あなたの現金のリターンについて、最善、中間、最悪のケースをご紹介します。下記の図は、タンスの中に現金を置いておくことが、ポートフォリオにとってゆっくりとした出血であることを示しています。ドイツのハイパーインフレは極端すぎるため、最初のシナリオからは除外されています。インフレはリターンを大きく阻害します。手に負えなくなったときには、現金や債券の含み益を完全に打ち消してしまう。つまり、タンス預金は、家にお金を置いておくことで、平均して年間約4%の損失を被ることになります。
現金の実質リターン
◆図6:現金価値の最良から最悪までのケース
最良のケース: | 年間-2.2% |
中央: | 年間-3.9% |
最悪のケース: | 年間-100% |

短期国債の実質リターン
次は短期国債の実質リターンを見てみましょう。短期国債(銀行預金もこれに近い)はただインフレーションについていくことくらいまでしかできず、それが限界である。下記の図が示すように、通常は収益を上げることはありませんが、少なくともタンス預金のように年4%の損失はありません。また、各国の株式市場の規模に基づいて加重されたグローバル時価総額加重ポートフォリオである「ワールド」も含みます。
◆図7:短期政府手形の実質リターン1900~2014年
最良ケース: | 2.10% | |
中間: | 0.70% | |
最悪ケース | -3.50% | (最悪のケース (ドイツ-100%)) |

次は長期国債を見ていきましょう。わずかなデュレーション・リスクが加わることで、10年債の過去の収益を倍増となっていますが、それでもリターンはかなり小さいといえます。1.7%の実質リターンでは金持ちにはなれませんし、あとで示すように、50%のドローダウンにも耐えなければいけません。
長期国債の実質リターン
◆図8:長期国債の実質リターン 1900~2014
最高ケース | 3.30% | |
中間のケース: | 1.70% | |
最悪ケース: | -1.40% | :(最悪のケース (ドイツ-100%)) |

株式の実質リターン
そして最後に、株式の実質リターンを見ていきましょう。インフレ率を控除して、年率4%を超える実質リターンは債券市場のリターンよりはるかに高いといえます。これらは素晴らしいリターンですが、運用資産を倍にするためには15年以上かかります。
◆図9:株の実質リターン(対数軸)1900~2014
最高ケース: | 7.40% | |
中間のケース: | 4.80% | |
最悪ケース: | 1.90% | (最悪のケース・中国・ロシア-100%) |

対数グラフと非対数グラフ
図10では、同じチャートが非対数y軸で示されています。これは、長期にわたるパーセンテージの変化を持つチャートを表示する場合、対数軸を使用して表示することの重要性を読者に示すためです。そうでなければ、チャートは適切に読むことができず、データを示すためには明らかに役に立ちません。重要なことは、利益が非対数軸のほうがはるかに大きく見えるため、以下の図ような誤解を招く可能性のあるチャートを使って説明する場合はある程度割り引いてみる必要があるだろう。
◆図10:株式リターン(非対数軸) 1900~2014

次回のお話について
今回は各資産の運用成績を確認してきました。次回はデータをより俯瞰的にみるためにすべての国の、最も優れたシナリオと最悪のシナリオをいくつか見てみましょう。単純な保守的な経験則では、株式は4%から5%程度、債券は1%から2%、そして手形は基本的にゼロになると予想されるようです。米国は、20世紀の株式・債券市場で最もパフォーマンスの高い市場の1つであったことは注目です。